
二人は 地下鉄半蔵門駅5番出口を出ると
四叉路を渡って 少し歩いてからそのまま右折した。
『 さて、、、 』
突然 森くんは足を止めた。
『 実はこの辺にも一部 現在でも実存の建物が 地図に全く反映されてない場所があるんだよね。、、、
ここも 最近 博君が夢中になって読んでいた ”改描(かいびょう)”の証拠となる場所だよ 』
『 ここが 現在も ”改描” されている場所だって?、、、 』
博くんは ここでまた 森くんに驚かされた、、、。
それは またも 彼が 他人には知りえないはずの
自分の私生活の内容について あっさり言い当てたからだ。
確かに つい 最近まで 博くんは 父の書斎にあった
戦時中に行われていた改描関連の資料を 読み漁っていた。
『 それから一つ忠告しておくけど、、
ここまでの道のり、 たとえ覚えたとしても一切無駄だからね。
二度と君はこの場所に辿り着くことはできないから、、、 』
この言葉を聞いても その時は意味が理解できなかったという。
なぜなら 博くんにとって この場所へ辿りつくまでの道順が
それほど難しいものでなかったからだ。
森くんは 古ぼけたビルの入り口階段前で立ち止まっていた。
辺りを見回し 誰も見ていないことを確認すると
急に博くんの腕をつかみ、
いきなり 目の前の白いコンクリートの階段を駆け上った。
階段を駆け上ると、
埃をかぶった木製の入り口扉を、無理やりこじ開けるようにして 中に入った。
博くんも半ば強引に 引きずり込まれるようにその建物内に入ったが
そのわずかな瞬間 入り口 上に 表札があったことを見逃さなかった。
その表札には 「 MISHIMA 」と書かれていた。
また その入り口は 施錠されてなかった、、、。
※改描(かいびょう、戦時改描):軍事その他の理由により、日本軍が第一次・第二次世界大戦時に
機密保持ならびに国防上の理由から地図上の記載を実際のものと違う表記に改変した行為を指す。
〜つづく〜
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約束の日曜 早朝、、
半蔵門駅に到着し ホームに降りたら
なんと 偶然なのか 既に 森くんが
自分が降りる車両の すぐ目の前に立っていたという。
まさか 彼が自分が乗った車両位置を知っていたのか?
と 一瞬思った博くんだったが、すぐに
その考えを自ら払拭した。
なぜなら そんなこと どう考えても 常識的に不可能だからだ。
日曜だったこともあり、
早朝の 半蔵門駅は 人もまばらだった。
森くんから 5番出口に向かうと言われた。
二人は駅ホーム内を押上方面に向かって歩いていき、
改札を出て、5番出口へと向かった。
『 約束は守ったよ、
どこで マイクロフィルムを渡してくれるの? 』
『 まだ待ってほしい。
それより、、、ここは僕の祖先ゆかりの地なんだ 』
森くんは どういう神経の持ち主なのか 全く悪びれる様子もなく受け答えした。
『 この半蔵門が 森くんのゆかりの地って、、
それって どういうこと?、、 』
『 半蔵門の地名の由来、、
歴史が得意な竹内君ならわかるかな? 』
『 うん、ここ半蔵門は、
かの徳川家康が 家臣である服部半蔵に警護させた地域であり
それが由来となって 誰言うともなく いつの間にか ここが 【半蔵門】という地名になったって
何かの本で読んだ記憶があるけど、、 』
『 確かに、、 他にも諸説あるけどね、、、、
でも実は 服部半蔵はただ家康を警護しただけでなかったんだよ 』
『 それってどういうこと? 』
『 それをこれからお見せするよ 』
※服部半蔵:この名前は服部家において代々襲名する名前である。
徳川家康に仕えたのは、二代目服部半蔵こと正成。
忍者としてのイメージが強いが、二代目以降は史実では武士とされている。
〜つづく〜
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『 で 結局 森くんと会ったってことなのかな? 』
探偵屋の男は 博くんに尋ねた。
『 ・・・・・・ 』
博くんは 黙って 頷いた。
待ち合わせの場所は、地下鉄半蔵門線 半蔵門駅構内だった。
約束の日は 週末の日曜 それも早朝6時と指定された。
奇妙なことに、雨が降った場合は中止するという。
探偵屋が 博くんから聞いた内容は、
とても信じられないものだった。
そして その内容こそが まさに竹内家を震撼させるものだった。
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明らかに それは脅迫行為だった。
博くんにとって何より理解できなかったのは、
どうして 最近引越してきたばかりの転校生が、
ここまで自分の家庭についての情報を持っているのかということだった。
自分の父の秘密が記録されているというマイクロフィルムを受け渡す条件は、
誰にも言わずに博くん一人で森くんの家に遊びにこい、
という理解不能なものであった。
森くんの 狙いがなんなのか いくら考えても さっぱりわからなかった。
博くんは その持ち前の優しさ故に誰にも相談せず、一人でその問題を抱え込んでしまった。
〜つづく〜
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だが 博くんは 森くんとの約束を守ることを余儀なくされた、、
それは 次の日 学校での出来事だった。
昼食後 博くんは ようやく勇気をだして
なかなか言い出せなかった断りの連絡を
森くんへ伝えようと近づいたその時だった。
彼は 目を合わせた途端 一瞬 とても中学生らしからぬ何とも言えない表情を浮かべたかと思うと
すぐに何やら薄い黒っぽいものを 博くんにそっと手渡したのだ。
それは 一片の幅が3.5cm ほどのもので そこには何かが映っているようだった。
『 な 何これ? 』
『 マイクロフィルムだよ。これに君のお父さんが写っているよ。 』
『 本当? 』
『 本当だよ 嘘だと思うんだったら それを窓にかざしてよく目を凝らして見てごらん 』
言われるがままに そのフィルムを窓側に向け目を細めて見ると
確かに 父親らしき人物が写っていることを確認した。
『 取引しよう。博くん 』
『 取引だって? 』
『 そうだよ。ぼくは君が断ろうとしていることはわかっていた。
でも 君は断ることはできない。
もし ぼくの家に遊びにきてくれたら 君のお父さんが写っている全てのマイクロフィルムも
ポケモンカードと一緒に渡すことを約束するよ 』
『 断ると言ったら? 』
『 お父さんは今毎日 職場に脅迫状が届いていることを君は知っているかな?
もし断るんだったら お父さんの秘密が全て収められたこのマイクロフィルム一式を
その脅迫者達にプレゼントするよ 』
〜つづく〜
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